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1回目

miwa.jpg (180×223)三輪哲二 教授

三輪:私の研究はキーワードで言うと、代数解析と数理物理です。代数解析というのは、うんとわかりやすく言うと、函数の満たす方程式を研究するということです。例えば、っていったら、2乗したら2になる数です。これは数に対する方程式ですが、数の代わりに函数が方程式を満たすことを研究するのが代数解析です。函数は変化する量を表すもので、それを研究することは、解析の中心テーマです。一方、函数が満たす方程式には微分や差分が出てきますが、いずれにしてもそれは関係式なので、代数的に扱うべきものになります。それで代数と解析が結びつく。代数解析という言葉は、大昔から使われていましたが、最近、といっても50年以上経ちましたが、「代数的な手法で解析学を扱う」という意味で、佐藤幹夫先生が提唱されました。もう一つのキーワードは、数理物理です。國府さんが言われた力学系も、物理から来ていますが、私の場合の数理物理は無限自由度が鍵になります。太陽の周りを地球が回るシステムでは、質点として位置だけを考えるならば、3次元空間の1点という意味で自由度3です。これに対して場の理論や統計物理では、自由度が無限大になる場合を考えます。例えば、磁石は、非常にたくさんの鉄の原子が格子状に並んだものです。その一つ一つの鉄の原子を、地球を質点と思って簡単化してしまうのと同じように、上向きの状態か、下向きの状態のどちらかをとる小さな磁石と思って単純化して考える。それでも、このシステムには鉄原子の数だけの自由度があることになります。隣り合った原子どうしが同じ向きを向きやすいか、反対を向きやすいかをエネルギーの違いとして与え、自由度が無限大になる極限で、いくつかの原子がどちらを向くかの平均的な振る舞いを、函数として捉えてやる。これが相関函数で、こういった量を計算したい。普通に考えると、計算の中に含まれる変数の数が自由度と共に増えてしまうので数学的に厳密な計算をしようとすると捉えようがない。ところがシステムの対称性が高いと、結果的に自由度が減ります。有限自由度の場合で説明すると、平面上の函数は座標xとyの函数ですが、回転対称の場合は、原点からの距離だけの函数になるといった具合です。無限自由度であったものが、有限自由度まで落ちることになった時に、そこに出てくる函数を、どんなふうに捉えることができるか、すなわちそれが満たす関係式にはどんなものがあるかを研究しています。なかなか簡単な例は話せませんが、自分たちの仕事の出発点になった人たちの仕事を紹介しましょう。1973年に4人の物理の人たちが論文を書いたんですが、そこに1900年頃に数学のほうで全然別の理由から発見されていた方程式であったり函数であったりが、答として出てきたのです。ほんとかどうか知りませんが、物理の雑誌に投稿したら、物理の問題でこんなややこしい函数が出てくるはずがないからリジェクトされてしまったとか(笑)。もちろん正しかったわけです。私が、佐藤先生、神保さんと最初にやった仕事は、このようにして物理の特定の問題と数学理論がつながるメカニズムを明らかにすることでした。もう35年くらい前かな。そんな感じです。それでは、西村先生お願いします。

 


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